‪「IT」を観てきた

恐かったー。

何が恐かったって、子供の頃の危うさを思い出したからだ。

好奇心旺盛で、不思議なものにすぐに惹かれてしまう自分を思い出した。

いつも通る道が、ふいに、いつもと違う世界と繋がったかのような瞬間に踏み出してしまうあの危うさ。‬
‪路地に潜む曲がり角の先。

天井の染みが踊りだす前。

兄ちゃんと遊んでたはずなのにふと入り込む影、振り返るとほんの少し開いた押入れの襖。

神社でかくれんぼしていた時の呼ばれた気がする茂みの向こう。

昼間は優しい大木の突然膨らむ闇。‬
‪そういう諸々を思い出して、恐かった。‬


‪「IT」が、スティーブン・キング原作だと知らなかったから、映画を観ながら私は「グーニーズ」のオマージュなのだと思った。ルーザーズの面々のキャラクターが、まるでグーニーズそっくりだと思った。

主人公の吃り癖。喘息持ちで神経質な子。おしゃべりな眼鏡。鈍臭いおデブちゃん。年上のグループの3人組。出てくる井戸や坂道を下る自転車などなど。

ちなみに旦那は、スタンド・バイ・ミーを想起したらしいけど、絶対にグーニーズの方が似ていると思う。キャラクターのそれぞれや場面場面は。‬
グーニーズを想起しながら、私は、未知に対するワクワクするような冒険と恐怖に対峙する勇気って、似ているんだなと思った。‬
それと‪、「IT」に出てくる「それ」って、ハリーポッターに出てくるディメンターとそっくりだった。

だから、海外には、「恐怖」に対する概念の根底に、そういう考え方があるんだろうとも思った。‬
‪だけど、スティーブン・キングが書いた原作があるなら、きっと逆なんだろう。‬
グーニーズが「IT」のオマージュで(調べてみたら、グーニーズは1985年に発表されていて、ITは1986年に発表されているらしい。となると、当時の子供の世界を描くのに最適な形態だったのかも?)、ディメンターが「IT」のピエロからきてるんだ。読んでみたいなと思った。‬


‪描き方が上手いなと思ったのは、現実にある恐怖との対比だった。‬
‪親から受ける支配的な恐怖。

いじめっ子から受ける加害への恐怖。

仲間に入れない疎外感からの恐怖。

上手くできなかったことによる見捨てられてしまう恐怖。

もっと単純な高い崖から水の中へ飛び降りる恐怖。‬
‪そういう、現実に存在する人間が与える恐怖と、ピエロが見せる非現実的な恐怖と、どちらがほんとうに恐いことなんだろうと、つい考えさせられる。‬


‪転機は、いじめっ子から逃げるのではなく、いじめられている子を助けようと行動を起こしたところにある。‬
‪恐怖に立ち向かい撃退できたことが、大きな自信になったのが本当に自然に描かれていた。‬


‪それが何か全くわからない間は恐怖するけれど、

それが「恐怖」を食い物にする、

一人一人別々にしようとする、

根城にしている場所がある、

と明らかになっていくうちに、ただ恐怖するしかなかったそれに、対抗しようと気持ちが変化していくのも面白かった。‬


‪最大の変化は、怒りがもたらした。‬
‪大切に想う弟の心をそれが利用しているのに気がついたとき、主人公は絶対にそれを許さないと思ったはずだ。というか、観ている私がそう思った。それからは、恐いけど恐くなくなった。‬


‪実際に、それと対峙するとき、最初に思ったのは「物理攻撃」が効くんだってこと。‬
‪でも、実はあれ、効いていたのは物理攻撃ではない。それがわかるのが、実弾の入っていない銃が効いたところにある。‬

立ち向かおうとするとき、恐怖って消えるんだ。


‪秀逸だなと思う。‬

恐怖の描き方もそうだけど、恐怖を克服していく過程の描き方がとても丁寧だった。


‪最後に、第一章とテロップが流れ、ますます原作を読みたくなった。‬